不安の波が来ている家族に、言わないほうがいい言葉

そばにいる人は、たいてい良かれと思って声をかけます。それなのに、なぜか相手の表情がもっとつらそうになる。

言葉の選び方で、その場の重さが変わることがあります。ここでは、避けたほうがいい言い方と、代わりに使える言い方を並べます。

先に書いておくと、これは「あなたの声かけが間違っていた」という話ではありません。ここに挙げる言葉は、どれもやさしさから出てくるものばかりです。ただ、受け取る側の状態によっては、別の意味で届いてしまうことがある、というだけです。

避けたい言い方と、言い換え

1.「気のせいだよ」「気にしすぎ」

本人にとっては、動悸も息苦しさも実際に起きている感覚です。「気のせい」と言われると、感覚そのものを否定されたように受け取られます。

避けたい言い方: 気のせいだよ

避けたい言い方: 考えすぎじゃない?

代わりに: そう感じてるんだね

代わりに: つらいのは分かった

内容に同意する必要はありません。「そう感じている」という事実を受け取るだけで十分です。

2.「大丈夫だよ」

短くて言いやすいぶん、いちばん使われる言葉ですが、根拠のない保証に聞こえて、届かないことがあります。

避けたい言い方: 大丈夫だよ

代わりに: ここにいるよ

代わりに: 時間は大丈夫だから、ゆっくりで

「大丈夫」の代わりに、何が大丈夫なのかを具体的にすると届きやすくなります。

3.「深呼吸して!」と急かす

呼吸を整えること自体は役に立ちます。ただ、急かす調子で言われると、うまくできない自分に意識が向いてしまうことがあります。

避けたい言い方: ほら、深呼吸して! 大きく吸って!

代わりに: (何も言わず、そばで自分がゆっくり吐いてみせる)

言葉より、隣で自分のペースを落として見せるほうが伝わることがあります。とくに「大きく吸って」より、吐く時間をゆっくり長くするほうが合う人が多いようです。

4.「みんなも同じだよ」「甘えじゃない?」

励ましのつもりでも、比較は「自分の感じ方がおかしい」という方向に働きます。

避けたい言い方: みんな緊張くらいするよ

避けたい言い方: 気合いでなんとかなる

代わりに: 人によって出方が違うみたいだね

5. その場で理由を問い詰める

避けたい言い方: なんでそうなるの?

避けたい言い方: さっきまで平気だったよね?

波が来ている最中は、言葉が出てこないことが多いです。理由を聞くのは、落ち着いてからにしてください。

6. 周囲に大きな声で知らせる

避けたい言い方: 「すみません、この人具合が悪くて!」と大声で人を集める

助けを呼ぶ判断が必要な場面はあります(後述)。ただ、そうでない場面で人が集まると、見られていること自体が負担になります。できれば、周囲の視線をこちらで引き受けるほうが楽になります。

まとめ表

避けたい代わりに
気のせいだよ / 気にしすぎそう感じてるんだね
大丈夫だよここにいるよ / 時間は大丈夫
ほら、深呼吸して!(黙って、そばでゆっくり吐いてみせる)
みんな同じだよ / 甘えじゃない人によって出方が違うみたいだね
なんでそうなるの?(落ち着いてから聞く)
大声で人を呼ぶ周囲の視線をこちらで引き受ける

うまくいかない日のこと

言い方を変えても、うまくいかない日はあります。

正しいとされる言葉をそのまま使ったのに、相手が余計につらそうになった。昨日は落ち着いたのに、今日は同じ言葉が響かなかった。

そういうことは、普通に起きます。

言葉は道具のひとつでしかなくて、その日の波の大きさや、体調や、周りの状況のほうが影響することもあります。

うまくいかなかったからといって、そばにいたことが無意味になるわけではありません。支える側が「自分のせいだ」と抱え込みすぎないことも、続けていくうえで大事です。

助けを呼んだほうがいい場面

言葉の話とは別に、判断を迷わないほうがいい場面があります。

こうしたときは迷わず 119 番へ。迷うときは #7119(救急安心センター)に電話で相談できます。

よくある質問

「深呼吸して」と言うのはよくないのですか。
言葉そのものが悪いというより、急かす調子になりやすいのが問題です。言うより、そばで自分がゆっくり吐いてみせるほうが伝わりやすいことがあります。
つい「大丈夫だよ」と言ってしまいます。
「大丈夫」は根拠を示さない励ましになりやすい言葉です。「ここにいるよ」「時間は大丈夫」のように、状況を保証する言い方に置き換えると届きやすくなります。
何も言えないまま黙ってしまいます。それでもいいですか。
黙ってそばにいるのは、十分に有効な対応の 1 つです。無理に言葉を探すより、落ち着いたあとで「さっきはどうしてほしかった?」と聞くほうが役に立ちます。

道具として

なぎもりは、電車や会議など途中で抜けにくい場面で不安が強くなったときに、音を出さずに呼吸を整えるための日本語のセルフケアアプリです。呼吸ガイドと 5-4-3-2-1 グラウンディングは無料で使えます(任意の有料プランもあります)。

アプリの中には、家族や身近な人に向けたページも入れてあります。

そばにいる人ができることは、こちらの記事 にまとめました。

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本記事となぎもりは、医療行為・診断・治療を目的とするものではありません。症状が続くとき、つらさが強いとき、心配なときは、医療機関にご相談ください。緊急時は 119 番、またはアプリ内の相談窓口をご利用ください。